現状で、睡眠時無呼吸症候群を完全に治すことができる治療はありません。
病院の指示で行うCPAP(シーパップ)でも、使用を止めてしまうとすぐに無呼吸の症状が表れてしまいます。
CPAPは使用できるようになるまでに検査や入院を必要とします。
どれも根治にはつながりませんが、睡眠時無呼吸症候群の原因を断てば症状を抑えることは可能です。手術のような大がかりなものから日常の些細な心がけまで、対策法を詳しく紹介します。
手術による治療
睡眠時無呼吸症候群で外科手術が選択されるのは、原因の症状が明らかな場合。
気道を閉塞させている原因となっている部分を切除した上、咽頭部(喉)を拡げ、呼吸がスムーズに行えることを目的とした手術です。適用されるのは咽頭扁桃と呼ばれるリンパ組織(アデノイド)が肥大して気道を塞いだ「アデノイド肥大」と、のどの入口にある口蓋扁桃が大きく肥大している「扁桃肥大」。
これらが原因となる無呼吸症候群は外科手術でないと改善は難しいですが、それ以外の場合は効果がないため、専門医からの慎重な判断が必要です。
口蓋垂(のどちんこ)の付近を切除するUPPPと呼ばれる手術もあります。費用はある耳鼻咽喉科クリニックを例にとると、3割の保険負担で29,100円ほどだそうです。
体質改善
肥満は生活習慣病の遠因となるため、注意が喚起されています。
また睡眠時無呼吸症候群の直接的な原因となってしまうことも。首の周りにたっぷりと付いた脂肪が、正常な呼吸を妨害しているというケースも多いのです。気道の圧迫に関わる首の周りの脂肪は一朝一夕に落とせません。
睡眠時無呼吸症候群対策として、専用の運動やストレッチを習得する必要がありそうです。またそれ以外にも「鼻呼吸の習慣をつける」という簡単な体質改善法もあります。
マウスピース治療
就寝時に口腔内装具(マウスピース)を装着し、睡眠時に無呼吸状態に陥る回数を減らしていく治療法です。マウスピースによって、下顎を数ミリほど前方に移動させて固定する「下顎前方整位型マウスピース」が一般的で、下顎をずらすことで気道が拡大され、いびきや睡眠中の無呼吸を防ぐことができます。医師によってマウスピース治療が適用されるのは、検査によって軽度~中軽度の睡眠時無呼吸症だと判断された場合のみです。重度(睡眠時の無呼吸・低呼吸の回数を表すAHI値が30以上)の場合は適用できません。また、歯並びをずらす形になるため、装着時の違和感が大きいデメリットを持っています。
CPAP療法
CPAPとは1981年にシドニー大学で開発された、睡眠時無呼吸症候群の治療マシンの名称。
中等度~重症の睡眠時無呼吸症候群の治療なら保険適用で使用でき、ひと月5,000円程度かかります。鼻に装着したマスク・エアチューブを介してマシンから空気を気道へ送り込むため、使用開始日からスムーズに鼻呼吸をすることが可能となります。人によっては「使用時に口の乾きを覚える」、「装着時に違和感を強く感じる」こともあるようです。
ナステントで対策
ナステントとは、鼻から挿入するチューブ状の医療機器で、日本のセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズという会社が販売しています。
睡眠時の呼吸を整えて、睡眠時無呼吸症候群の改善や寝苦しさ、睡眠中の頻繁な覚醒を予防する効果があります。鼻から機器を挿入するといっても、チューブにはハイドロジェルという潤滑油が使われるなど、腔内への負担を最小限に抑える工夫がされているので、ほとんど違和感なく使用できます。
ナステントは全国150以上の医療機関で取り扱われており、無呼吸症候群やいびきへの改善効果は広く認められています。